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認知症になってからでも家族信託は利用できる?判断基準は?

認知症に備えた財産管理の方法として注目を集める家族信託ですが、認知症を発症した後でも設定は可能なのでしょうか。

本記事では、認知症と診断された方の家族信託における判断能力の基準や、契約に必要な要件について解説します。

認知症発症後の家族信託は可能か

家族信託とは、大切な財産を守るための信頼できる管理の仕組みです。

それでは、認知症の診断後に家族信託を利用することは可能なのでしょうか。

認知症発症後の家族信託は原則として不可能

家族信託は契約行為にあたり、認知症により判断力が低下した状態では信託契約を結ぶことができません。

したがって、原則、認知症発症後の家族信託の利用は不可能です。

家族信託における認知症判定基準について

家族信託の設定に必要な判断能力は、介護の必要性や入院の有無とは直接関係ありません。

身体的なケアが必要な状態でも、契約内容を適切に理解できる場合は信託契約を結ぶことができます。

契約に必要な判断能力の基準は以下のとおりです。

 

  • 個人情報(氏名・生年月日・住所)を正確に答えられる
  • 署名が可能である(身体的に困難である場合は除く)
  • 契約内容を理解している

個人情報(氏名・生年月日・住所)を正確に答えられる

公証人による本人確認の際には、個人情報を正確に答えられなくてはいけません。

運転免許証や印鑑証明書などの公的証明書に記載された住所、氏名、生年月日について質問されたとき、適切に回答できない場合は判断能力に不安があると考えられます。

署名が可能である

本人の意思で契約書に署名できるかは、判断力を確認する重要な指標です。

ただし、身体的な制限により署名が難しい場合、家族などのサポートを受けて署名することが認められる場合もあります。

契約内容を理解している

委託者の契約内容の理解力は、以下で説明する3つの要素で評価されます。

これらを明確に把握し、自分の意思を伝えられる場合は、認知症の診断があったとしても信託契約を結ぶことが可能です。

信託対象となる財産の認識

信託する資産の内容を認識していることが必要です。

たとえば、不動産の場合、物件の正確な地番や家屋番号までは求められませんが、以下の内容を認識できることが重要です。

 

  • 不動産の種類(自宅や賃貸物件など)
  • 物件のおおよその場所
  • 建物の特徴
信託財産の管理者を誰にするか

財産管理を委ねる受託者の選定は契約の重要な要素です。

具体的には、主たる管理者(例:長男)と、不測の事態に備えた代替の管理者(例:次男)を明確に指定できることが必要になります。

相続先と相続人の指定

財産継承の具体的な希望を明確に説明できることが重要です。

「全財産を長男へ」や「預貯金は子どもたちで分配、自宅は配偶者へ」などの具体的な意思表示が必要になります。

ただし、内容が複雑な場合は高度な判断力が求められるため、公証人は慎重に判断します。

まとめ

家族信託は認知症発症後、原則として利用できませんが、一定の判断能力が保たれている場合は利用が可能です。

契約には基本情報の認識、署名能力、契約内容の理解が必要です。

具体的には、自身の情報を答えられること、契約書へ署名できること、そして管理する財産、受託者、相続先について明確に意思表示できることが求められます。

家族信託について、疑問や悩みがある場合には、司法書士などの専門家に相談してみましょう。

司法書士紹介

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司法書士 桒原 穂高 (くわはら ほだか)

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  • 東京司法書士会(6874)(簡裁訴訟代理等関係業務認定会員)
  • NPO法人成年後見支援センターのぞみ副理事
    (親なきあと問題への対応、家族会での講演等)
経歴

親元は山間の米農家、引越しを繰返しながらいくつもの地方都市で幼少期を過ごし、大学進学を機に東京へ。司法書士として不動産を含む相続対策や老後対策、障がいを持つかたの親なきあと問題に数多く携わる。

全国様々な地域に住んだ経験から、各地域の良さや課題を見つめ、業務に取り組む。

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